2019.04.16更新

皆さん本日は御入学誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。
緑豊かな六甲の山並には春霞が棚引き、大輪田の泊りから水平線を望む大海原は陽春の光を浴びて金波、銀波の波が十重二十重と打ち寄せ、校庭に桜花は爛漫と咲き誇り、心地よき春風に乗って一片の花弁が新入生諸君の肩に散る様を想い浮かべて心楽しく、麗しき今日の良き日に御入学された事嬉しく思います。
私は兵庫工業倶楽部の理事長の大役を平成23年度より仰せ付かっております高校18回化学科を卒業しました冨金原伸伍でございます。我が「県工」は明治35年11月、兵庫県立工業高校として建築、機械の2学科、生徒数65名をもって開校致しました。その後明治42年電気科、大正6年応用化学科、大正10年土木科、戦後は学制改革により現在の兵庫県立兵庫工業高等学校となりました。更に時代の変遷に対応するべく、昭和33年デザイン科、34年電子科、62年には情報技術科を新設し現在では8学科を有する全国でも有数の工業高校として発展して参りました。
又、兵庫工業倶楽部は母校の発展と共に卒業者総数は34,964名からなる大同窓会であります。組織的には8つの各科別同窓会、10の地方支部、多数の勤務先兵工会が存在しております。このように116年の伝統と歴史に支えられた兵庫工業倶楽部同窓会に、三年後、今日御入学された317名の方々が全員御入会頂ける事を心より嬉しく心強く思っております。
皆さん方は今日県工に入学されましたが、ある一部の人達を除いて、未だに尚目的意識は固まらず、何のような学生生活を送ろうかと漠とした不安を抱いている学生諸君も多いのではなかろうかと推察する所であります。15才、16才の経験値で未来の全てを見通す事は大変難しい事であると思います。
私事になりますが、私は昭和38年に入学しました。今から数えて56年前の事になります。それこそ右も左も何も分からないまま入学しました。唯一つ体操に興味があったので、何んの意図もなく体操部に入部して3年間を過ごしました。その間、入部時には予想もしなかった事が次々と起こって来たのです。偶々体操部に入部したのですが、当時、県工の体操部は国民体育大会に団体徒手体操として出場していたのです。その流れの中で、県大会、近畿大会、インターハイ、国体等々に参加する事が出来ました。
県工時代の小さな、小さな一粒種程の経験が其の後の私の生涯に大きく影響を及ぼしたのは紛れもない事実であります。この小さなケシ粒種程の種がやがて発芽して双葉となり生長を重ね重ねて大きく育ってその後多くの果実と、堅牢なる年輪を刻んでくれました。体育館で3年間励んだ小さな出来事が今日を築いてくれる発端となったのです。
今日御入学された学生諸君の中で、目指すものが未だ何も見い出せていないなれば、今日から何でも良いので何か少しの興味でも湧くものがあれば、それをチャンスとして捉えてチャレンジしてみて下さい。其処からとんでもない大輪の花が将来開花するかもしれません。兎に角、光陰矢の如しのような短い3年間の学生生活の中で、学校で多くの事を学ぶ事は出来ません。然し、森羅万象の全てに通ずる基礎の基礎を学ぶ事は充分に可能な事だと思います。基礎という原点さえ捉える事が出来ておれば、その原点を中心として無限大の正確な同心円を描く事も可能となるでしょう。
この3年間で全ての心髄に通じる基礎の基礎を学ばれん事を切望して本日の祝辞とさせて頂きます。
本日は御入学誠におめでとうございます。

平成31年4月8日

       兵庫工業倶楽部理事長  冨金原 伸伍

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