2013.02.26更新

平成25年2月25日
皆さんお早うございます。
本日は御卒業誠におめでとうございます。衷心より御祝い申し上げます。
又、今日に至る迄長い間、教職員の皆様方、御父兄の皆様方並びに
関係各位の皆様方本当に御苦労様でございました。
高い席からではございますが心より御喜び申し上げます。
私は平成23年度より兵庫工業倶楽部理事長の大役を
仰せつかっております高校18回化学科を卒業致しました
冨金原伸伍でございます。
我が「県工」は明治35年11月、兵庫県立工業高校として建築、
機械の2学科、生徒数65名をもって開校致しました。
その後明治42年電気科、大正6年応用化学科、大正10年土木科、
戦後は学制改革により現在の兵庫県立兵庫工業高等学校となりました。
更に時代の変遷に対応するべく、昭和33年デザイン科、34年電子科、
62年には情報技術科を新設し現在では8学科、960名を有する
全国でも有数なる工業高校として発展し君臨して参りました。
又、兵庫工業倶楽部は母校の発展と共に卒業者総数は
32,757名からなる大同窓会であります。
組織的には8つの各科別同窓会、10の地方支部、
多数の勤務先兵工会が存在しております。
このように110年の輝ける伝統と歴史に支えられた
兵庫工業倶楽部同窓会に、本日御入会して頂ける事
心より嬉しく、又心強く思います。
 昨年は110周年記念式典を立派に挙行する事が出来ました事、
改めてこの場を借りて御報告致したく思います。
 明治35年県工創立期の日本は如何にあったのでしょうか。
何故県工という工業人育成の為の学校が必要であったのでしょうか、
今我々はこの歴史的背景を検証するべきであります。
当時の日本は220年間にも及ぶ鎖国がようやく解き放たれ、
諸外国に門戸を開いた時でした。
幕末のこの時にあっても鎖国を続け一国主義を貫き通し
今迄通りの日本の国体を護持しようとする者、
開国をして日本を発展させ、日本を存亡の危機から守るべきだと
主張する者、甲論乙駁の議論が百出しその結果開国への道を
歩む事になりました。しかし乍ら科学技術、工業技術等、
欧米の先進諸国と比べるまでもなく、彼我の差は歴然としておりました。
一日も早く工業化を果たし、工業立国を打ち立てる必要がありました。
当時の日本は貧しく富も資源もありませんでした。
しかし素晴らしい人的資源に恵まれており、
識字率は当時世界一でありました。士農工商という封建制の中で
身分制度があるにも拘らず、多くの日本人は読み書きそろばんが出来ました。
即ち考える能力があったという事であります。
又、日本人は本質的に何にでも興味を持つ好奇心の塊のような
民族性があったとも当時の外国人が評しております。
 開国間もない明治期の為政者達は外国を広く見聞し、
先進諸外国を商人国家として看破しこれならば20数年もあれば追いつく事が
出来るという洞察力の元、社会的諸関係や人間の価値観、封建的な因習、
様式等を脱して合理的、科学的、民主的になる為の近代化を
矢継ぎ早に打ち立てていきました。
極東の名も知れない小国が産声をあげて間もなく,
清国、露国と干戈を交えこの二強大国を打ち破る事が出来たのは
数多くの天佑神助に負う処多々あったであろうと思いますが、
その時々の政治的リーダー達、其れを良しとして一丸となった日本人の
アイデンティティーによる処と思います。
日本人の特性とされる一旦緩急あれば義勇公に奉じる精神性は
今の日本人にもしっかりと受け継がれているように思います。
先の東日本大震災に於ける原発メルトダウンを防止する為に
多くの原発技術者達が身命を賭して、自らが志願をして突入し、
原発の爆発を回避させたと聞き及んでおります。
日本人は国家、国民が存亡の危機に曝された時、
国民は覚醒して一体化し国難を排してきたように思います。
今日の日本は戦後レジーム(枠組み)の中で68年間過ごして参りました。
憲法を始め多くの仕組みが制度疲労しているにも拘わらず、
変化を恐れ、改革、革新を遠ざけて参りました。
失われた20年と称して、今の日本は製造業を始め多くの産業が疲弊し、
悲鳴を上げております。
今の日本程、新機軸を求められている時はない様に思います。   
この苛酷な世界の中で日本は生き延びていく術はあるのでしょうか。
諸賢にお聞きしたいところであります。
地球の歴史を振り返って見る時、その答えは自ずと出されております。
中生代に栄え、絶滅した巨大な爬虫類の一種、恐竜がそうであります。
今から約2億4700万年前から約6500万年前迄の間、1億8200万年間
地球上で最強を誇っていた動物ですが、
ある時期を迎えるや否や一瞬の中に絶滅してしまいました。
彼等の種として唯一生存する事が出来たのは鳥類のみとなっています。
絶滅した理由として、気候の変化、隕石衝突説とか、色々といわれておりますが、
詰まる所恐竜たちは激変する地球環境に適応出来なかったと言う事になります。
事実この変化に適応して
現在に至る迄生存を維持している種も多々あるとか聞いております。
我々ホモサピエンスにも当てはまります。
20万年前に出現し2万数千年前に絶滅したネアンデルタール人を始め、
クロマニヨン人、デニソワ人、フローレンス人等、地球上に出現しましたが
ホモサピエンスを除きそのいずれもが地球環境に敵応出来ずに
滅びてしまいました。唯一現存するのが我々現生人類の属する
ホモサピエンスであります。
結論として云える事は、強者は生き残る事は出来ない
という事であります。弱者も生き残ることは出来ません。
唯一生き残る事が出来るのはその時々の環境に
適応出来たものに限られます。即ち適者生存という事になります。
このような地球の歴史、栄枯盛衰の推移を冷静に見つめる事により
日本の未来の答えも進むべき道も見えてくるように思われます。
 我々はこの戦後68年間の中、失われた20年間の間は特に変化を求めず、
夢うつつに過ごしてきたのではないかと思います。
日本の商品の多くもガラパゴス化し、日本一国のみに通用する物ばかりを作り出し、
世界に通用しない商品群を生み出すに至ってしまいました。
当然の事乍ら輸出力に劣る事になります。
その間隙を突いて、新興国が労働力の安さを武器に追い上げて参りました。
特に白物家電に至っては部品の寄せ集めで作る事が出来るので、
日本の競争力の低下は火を見るよりも明らかであります。
このように見てきますと日本は沈んでいくばかりで、
もう二度と日の目を見ることが出来ないのではないかと思い悩んでしまいますが、
今の日本はそんな柔な国ではありません。経済力は依然として
世界第3位を誇っております。2009年時点で国民の総貯蓄額は
1500兆円はあろうかと思います。国が880兆円の財政赤字を抱えていますが、
国民は依然として金持ちであります。
日本の対外純資産も21年連続で世界最大となり、
2011年時点で253兆円となっております。このように考えてきますと
何等憂うる事はなく、今までの舵取りがまずかっただけという事になります。
押してダメなら引いてみなという諺があるように、
今迄のやり方の正反対の事をやれば良いと言うことになります。
端的に云えばデフレーションがダメ日本を作ってしまったのならば、
その真逆のインフレーションにすれば良いと言う事になります。
只一言付け加えておかなければならない事は、過ぎたるは及ばざるが如しで、
何事も良い加減、いい塩梅でなければなりません。
今日御卒業される県工健児の皆さん、皆さん方は県工の学び舎で
3年間という短い期間ではありましたが、体育、知育、徳育という崇高なる
教育を享受してこられました。これ等の素晴らしい基礎を土台として
明日から社会に於いて大きな大きな大輪の花を咲かせて欲しく思います。
県工健児諸君、後を振り向かず前進あるのみ、
向上心あるのみの人生を歩んで下さい。
県工時代に培った不撓不屈の県工魂で頑張って下さい。
そして、貴方方の栄えある一時代を築き謳歌して下さい。
貴方方の多くの先輩諸氏もその時々の時代を担い
夢を追い一生懸命に生き抜いて来ました。
事の善し悪しは後世の歴史家にその判断は任せるとしても、
歴史を今の価値観で裁くような愚かなことはせずに、
その事実を学ぶべきであります。
賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶという事をしっかりと認識して下さい。
明日より貴方方は広大な世界に夢を膨らませてその実現の為に切磋琢磨し、
惜しみない努力をして下さい。一度しかない人生を精一杯生き抜いて下さい。
適者のみ生存出来ることを肝に銘じて下さい。
適応する為に改革を恐れてはいけません。革新に躊躇してはいけません。
少しの勇気と努力と想像力と気概でこの困難な時代を乗り越えていきましょう。
悔いのない人生を送られん事を切に祈念致しております。
私達、兵庫工業倶楽部は皆さんの若い力を大いに期待しております。
私達OBは皆さん方の応援団として控えております。
将来的に何かあるようでしたら御遠慮等なさらずに甘えられたらよかろうかと思います。
 私達、兵庫工業倶楽部は皆さん方、県工健児の行く末を見守っております。
幸多かれの言葉をもって私からの御挨拶とさせて頂きます。 
本日は誠におめでとうございます。ありがとうございました。

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